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思春期の臨床的特性

思春期(おおよそ12歳から18歳)は、身体的、情緒的、社会的に大きな変化が起こる時期であり、臨床的に注目すべき特徴がいくつか見られます。この時期には自我の発達や他者との関係性、アイデンティティの確立が重要な課題となる一方、心理的な問題や行動面での困難が表れることもあります。思春期における臨床的特性について、以下に詳しく説明します。

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1. 自我の発達とアイデンティティの混乱

思春期は、自分が誰であるか、何を目指すべきかといった「アイデンティティの確立」が大きなテーマとなります。しかし、自己認識や自己概念に混乱を抱える場合があり、これは思春期特有の問題として現れます。

  • アイデンティティの模索: 自己に対する不安や混乱から、自分の価値観、目標、役割について深く考える時期です。これにより、自信を失ったり、極端に自己批判的になることがあります。

  • 自己認識の歪み: 自己に対して過度に否定的な見方をしたり、他人との比較から自尊心が低下することがあります。

 

2. 身体イメージと摂食障害

思春期の身体的変化(第二次性徴)によって自分の体に対する意識が高まるため、身体イメージに対する不安が増加することがあります。これに関連して摂食障害が見られることがあります。

  • 摂食障害(Eating Disorders): 拒食症(Anorexia Nervosa)や過食症(Bulimia Nervosa)がこの時期に発症することが多く、体型や体重に対する極端な恐れや、食事制限、過剰な運動などの行動が見られます。

  • ボディイメージの歪み: 自分の体型や外見に対して過度な不満を抱き、外見を改善しようとする強い欲求が生じます。

 

3. 精神的健康の問題

思春期は精神的なストレスや感情の波が激しく、これが持続することで臨床的に注意を要する精神的問題が発生することがあります。

  • うつ病(Depression): 無力感、興味や意欲の低下、睡眠や食欲の変化などの症状が現れることがあります。自尊心の低下や孤独感が強くなり、極端な場合は自傷行為や自殺念慮につながることもあります。

  • 不安障害(Anxiety Disorders): 学校や友人関係、将来に対する不安が過度になると、強いストレスやパニック発作、回避行動が見られます。特に、社会不安障害(Social Anxiety Disorder)は、思春期に多く見られる障害です。

 

4. 行動の問題と反抗的態度

この時期には独立心が芽生え、親や教師などの権威に反抗する行動が現れることがあります。これが一過性であれば成長の一環ですが、深刻な場合は臨床的な介入が必要です。

  • 反抗挑戦性障害(Oppositional Defiant Disorder, ODD): 持続的に反抗的な態度や攻撃的な行動を取り、親や教師などとの対立を繰り返します。

  • 非行やリスクの高い行動: 法的な問題や反社会的行動(例:窃盗、破壊行為)に関与することがあり、薬物やアルコールの乱用もリスクとして挙げられます。

 

5. 対人関係と社会的な問題

思春期は、友人関係や恋愛、グループに属することが重要視される時期であり、この領域での問題が臨床的に観察されることがあります。

  • いじめの被害者または加害者: 学校内でいじめの対象となることや、逆に他者をいじめる行動が見られることがあり、これは情緒的および行動的な問題と関連することがあります。

  • 孤立感や排除感: 他者との関わりを避けたり、孤立することが多く、友人関係をうまく築けないことが見られます。これにより、強い孤独感や疎外感を感じることがあります。

 

6. 性的発達と性的アイデンティティ

性的な発達が進むことで、性に関する混乱や不安が発生することがあります。

  • 性的アイデンティティの混乱: 自分の性的指向や性別に関して混乱を感じたり、他者に対する性的魅力に対して戸惑いが生じることがあります。

  • 性的リスク行動: 早期に性的な行為に関与し、避妊や性感染症予防についての知識や配慮が不足することがあります。

思春期は心理的なストレスが特に高まる時期であるため、適切な支援やカウンセリングが重要です。家族や学校、専門家のサポートが個人の健全な発達に大きな影響を与えることがあります。

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